借地権の相談

大型ショッピングセンターに約40年前に建物底地としてに賃貸している方からの相談。
「40年前の賃貸借契約書には建物老朽化及び倒産の時の、建物の撤去費用負担についての文言がありません。土地を売却したいと思いましたところ、購入希望者より、もしもの時の為に建 物撤去費用として月々に分割でも良いから保証金を積んでもらったら購入できるとの事でした。40年前の契約には、撤去費用の事は触れられていません。先日借主に原状復帰の文言を入れて契約更新してほしいとお願いしたところ、却下されました。ちなみに建物が建っている土地の広さで負担金を按分したら貸主の負担が三千万円位になりそうです。常識的に考えると、旧借家法が生きているという事でもらえないのでしょうか?撤去費用は借主の負担であると思われますが、相手にされそうもありません、なんとか良い方法はありませんか?」

上記の相談に対し、以下の様にお答え致しました。

40年前の土地賃貸借契約は(旧法)借地法が適用されますので、建物の老朽化や賃借会社の倒産により合意解約された場合は、賃借人は建物を撤去して更地を賃貸人に返還することが原則です。ただし、合意解約をする場合に解約の交渉と同時に建物撤去費用について話し合われることが通常ですので、交渉の場で了解を得ていくことになると考えます。
建物の老朽化による借地権の消滅は建物全体がもはや構造上の意義を失った場合のことですので、ショッピングセンターの様な営業施設の建物では、建物が老朽化してきた段階で、賃貸人に承諾を得て、大修理か建て替えをするでしょうから、現実の問題として建物の老 朽化を原因として借地権の消滅はほとんどないといってよいでしょう。また、賃借会社が倒産したような場合は、借地契約の解除に伴う建物の収去と土地の明渡しを求める裁判を提起し、確定判決を得て強制執行の申立をすることになりますが、その場合、建物の撤去作業は代替執行手続きで、判所所が行うことになり、その費用は貸し主が立て替えて支払うことになります。その後、借主会社から回収することになりますが、事実上不可能となりますので、最終的には貸主の負担となります。考えられる方策としては、借主に建物撤去費用相当額の保証金を入れてもらい、信用ある保証人を立ててもらった上で、その保証人に対し、賃料の不払い等があったときの保証金の管理処分権を付与すると共に借地権が解除されたときの建物撤去義務を課すことを公正証書にすることが最良ですが、更新の際に新たに保証金の差し入れ要求は受け入れられないと思いますので、(旧)借地法の適用される借地契約の更新は旧借地法が継続されますので、その借地契約が終了した場合は、借主には民法上、原状回復義務があります。その点を契約更新の際の契約書に明記することを弁護士等に交渉依頼することをお勧め致します。