法定公共物の取得時効について

市の水路の境界線の事例です。

市から測量の方来られ、境界の水路を含めた土地の区画整備をするので境界線を確定させる判子がほしいと言われました。
測量の結果、父が境界に建てたブロック塀が30cmもはみ出ているそうです。それは40年も前からある屏です。
そんな内側の境界線を認めなければいけないのでしょうか?
水路なので区画整備しても他の人の名義にはならないだろうし、家の建て替えなどをする時まで屏はそのままでいいと言われましたが不安です。

登記上、市の水路の土地であることは間違いないようです。
また水路の横に屏があるので、実際の水路の上ではなく水の通るのを邪魔している場所ではありません。
例えば時効取得を主張することはできるのでしょうか?

道路法、河川法、下水道法等の特別法によって管理の方法などが定められているものを「法定公共物」といいます。
これに対して特別法が適用または準用されないものを「法定外公共物」といい、その代表的なものとして「里道」や「水路」があります。
第1に公の用に供されている「公物」は原則的に取得時効を主張できない。
第2に公物に取得時効を主張するには「公用廃止」を申請して、普通財産化する必要があります。

このような場合で取得時効を援用して認められた判例があります。(最高裁昭和51年12月24日第二小法廷判決)
このなかで公共用財産の黙示の公用廃止の4要件が示されています。
① 長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置されていること。
② 公共用財産としての形態、機能を全く喪失していること。
③ その物の上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなことがないこと。
④ もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなったこと。
自主占有開始の時点までにはこれらの4要件に適合する客観的状況が存在していたことが必要だといわれています。
ご相談の水路の現状は、水路として公共の機能を果たしていると思えますので、上記の4要件を満たしているとは思われません。
従って、取得時効で所有権を主張することは難しいといえます。





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