中国人の海外不動産投資

中国人の投資先として魅力を増しているのは外国だ。中国政府は市民が国外に持ち出せる金額を1人5万ドルまでに厳しく制限しているが、他人と協力して規制をかいくぐることはできる。「銀行口座を交換するなどの方法で最大100万ドルを国外に持ち出せることも多い」と、中国経済に詳しいエコノミストは言う。
中国人はかなり高級志向のようで、こうした状況は、80年代後半のジャパンマネーによるアメリカの有名不動産の買いあさりを思い起こさせるかもしれない。
ニューヨークのロックフェラーセンターやカリフォルニアの名門ゴルフ場が相次いで買収され、「日本株式会社」がアメリカを席巻するのではないかと懸念する声も上がった。
ところがその後、日本の資産バブルが崩壊、以来20年間、日本経済は低迷したままだ。

汚職取り締まりの影響も

「中国マネーが象徴する資本流出はジャパンマネーのときとはタイプが異なる。企業ではなく一族や個人が原動力になっている」らしい。

きれいな空気と優れた教育システムを求めて、中国の富裕層(資産総額160万ドル以上)の64%が既に国外に移住しているか、移住を計画している。習近平(シ―・チーピン)国家主席が就任以降、汚職取り締まりに意欲的で、高級住宅を複数所有するなど富を誇示する官僚を罰していることも、海外資産購入に拍車を掛けている。

「反汚職キャンペーンのせいで資産状況を曖昧にしたがっている中国人が多い」
かつて「世界の工場」だった中国には外国からの投資が流れ込み、世界第2の経済大国に成長する追い風となった。しかし資本規制が緩和された結果、12年には資本収支が赤字に。中国政府は一層の規制緩和をほのめかしており、資本逃避を招く恐れがあるとIMF国際通貨基金)は警告している。

海外の不動産に中国マネーが殺到すれば、既に不動産を所有している人には朗報だろうが、これから買いたい人は不利になる。「こうした資本流出の受け皿になるのはどんな資産かといえば、主に不動産だ」

GDPの伸びはどうあれ、中国人の海外投資熱は今も健在だ。「中国がいまホットだとか、アメリカが中国に完敗するとか、中国が世界第1位の経済大国になるとか言われているが、非常に多くの中国人が資金を国外に出したがっている状況なのは確かなようだ」

[ニューズウィーク2014年10月28日号を一部転載]




土地家屋調査士が兼業する不動産会社・ヤマダエステート株式会社